【論説】青森浪岡中いじめ自殺事件-「遺書」からの教訓

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2016年8月25日にいじめを苦に自殺した、当時浪岡中学校2年生の葛西りまさん(13)は、加害者生徒の実名を挙げた「遺書」をスマートフォンに遺した。遺族は被害者生徒の実名とともに「遺書」の一部を公開した。
浪岡中いじめ自殺事件の遺書
この報道の反響は大きく、インターネット上では同中学校の関係者と思われる複数の人物からの告発が多数寄せられ、現在生徒の氏名やTwitterのアカウントや画像などが無数にアップされている。
黒石よされ写真コンテストの葛西りまさん
被害者が被写体となっていた写真は、今年の「黒石よされ写真コンテスト」で大賞が内定し遺族も了承していたが、黒石市の意向で一度は内定が取り消され、実行委員会からも撮影者に口止めが求められた。その報道をうけ、全国から抗議が殺到。高樋憲黒石市長が謝罪し、大賞に再び決定した。被害者の父親は授賞の決定に、「『いじめをなくしたい』という娘の願いをかなえたい」と語っている。

加害者生徒、保護者、学校、市の責任問題などの課題は残っているが、被害者生徒が自殺時の「遺書」という選択肢をとったにせよ、加害者を実名で告発したことと、遺族による「遺書」の公開が、具体的な事件解決への進展につながったと言える。

仙台市立館中学校いじめ自殺事件の場合、いじめ自殺の直後、教諭がクラスの生徒に被害者生徒は転校したと説明し、翌年第三者委員会によっていじめ自殺があったことが報告されるも仙台市は学校名を秘匿。在校生にも緘口令を敷くという徹底した隠蔽が行われた。同事件は現在宮城地方裁判所において民事裁判中であるが、加害者生徒8名とその保護者は「いじめはなかった」と争い、市も生徒の自殺の責任はないとして、加害者とともに遺族と争っている。また、被害者遺族は仙台市も館中学校も一連の隠蔽を「遺族の意向」と説明してきたことを非難している。こうした徹底した隠蔽は、浪岡中の事件の展開と真逆と言えるだろう。

両事件から得られる教訓は、学校におけるいじめの再発防止には、いじめの被害を受けたとき、加害者の実名を文書によって告発することではないだろうか。現在、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)により、地方公共団体は条例の定めるところで、いじめ問題対策連絡協議会を置くことができる。従来、学校でいじめがあった際、学生は教諭か保護者に相談し、保護者が学校に相談しても十分な対応を行わないばかりか、時には証拠隠滅に近い処分が行われてきた。しかし、文書による告発を然るべき場所に提出することで、被害者生徒をより確実に保護することができる。いじめのは刑事犯罪であることが多いため、所轄の警察への相談時も告発文は証拠資料となる。

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いじめの被害を受けたら、決して一人で悩まず、まずはノートに「いつ」「誰に」「何を」されたのかを記し、その上で保護者あるいは直接、警察の少年課(学校のいじめ問題にも対応している)に相談すること。自殺を決意するまで精神的に追いつめられる前に、である。このことを、私達は自身の家族や親戚や友人、近所や町の子どもたちに、広く呼びかけていくことだ。それこそが、いじめを苦に自殺した生徒たちの命を無駄にしないための、大人の責任ではないだろうか。

2016年10月21日

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天之加久矢
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