論説:教育に「デジタル化」は向かない

教室

いま学校教育にパソコンやタブレット端末を積極的に導入しようという動きが出ている。電子黒板や電子パネル、ウェブなどの、いわゆるIT機器を駆使した学校教育を充実させようというのだ。これには文部科学省も積極的。しかし結論から言ってしまうと、流行することはない。一時的なブームに終わる可能性が高いのだ。

IT機器が学校教育に不向きな理由として、複雑なソフトを使いこなす余裕や機材を準備する時間がないことが挙げられる。一昔前であると授業の合間の休み時間は5分間が主流であったが、最近では改善され、どこの学校も10分間になった。しかし10分間といっても短いもの。トイレに行って、教室で休憩すればあっという間に過ぎてゆく。教師も、職員室に戻って次の準備をしている間にあっという間に10分間は経過する。元からIT設備が整っている大学などは別として、小中学校では、パソコンを立ち上げ、プロジェクタと配線してソフトを準備し、スクリーンに映し調整して・・・などという手間がかかるIT機器は向いていないのだ。仮にスムーズに準備ができたとしても、あらかじめ用意しておいた特定のプログラムしか映し出せないパソコンは、臨機応変に対応できる黒板には絶対に敵わうことはない。また、教師が教材となるプログラムを組んでいる時間もない。最初から教材として出回っている教育ソフトを使うのが関の山といった感じだろう。

そしてもう一つ肝心なことを忘れてはいけない。文部科学省の定める教育目標との関連だ。現行の教育目標とデジタル化は相対してしまっているのである。どういうことかというと、現在の教育目標は、子どもが主体的に物事を考え自発的に活動することが中身。教師側が一方的に授業を行い説明する時代ではないことを示しているのだ。一方、パソコンやタブレット端末などは「視聴」に特化している。「視聴」に特化したIT機器を一体どのように使いこなすと、子どもが主体的に物事を考え自発的に活動できるのだろうか?IT機器と子どもの自発性の相関性の関係が研究されないまま、導入だけが推し進められているのが現状なのだ。ちなみにIT機器導入に関しては、文部科学省に一番重大な責任がある。現行の教育目標と教育のデジタル化の矛盾を全く気付いていないのだから。文部科学省はどのような勝算があって学校のデジタル化を進めているのだろうか。導入だけを推し進め、学校はどうしたら良いのか、指導案や指導内容などは具体的に何も説明もしていないままだ。まさかとは思うが、デジタル化を推進すればパソコンやプロジェクタ、専用ソフト、タブレット端末などを教育委員会や各学校が購入しなければならなくなるため、特定の企業に相当の利益が生まれることとなる。教育のデジタル化には“大人の事情”が絡んでいる可能性も否定できない状況だ。

学校教育はやはりアナログが一番だ。例えば社会科の授業で地図を読む学習を行うとする。従来だったら特定の地名を探す場合、地図帳を使い索引から見付け、緯度経度を読み取り範囲を絞っていき、ようやく目的の場所にたどり着くことになる。一見すると面倒であるが、過程が大切。そこでは複数の知識を総合的に考える力が身に付くのだ。しかしデジタルならば、文字検索すればあっという間に見付かってしまう。これでは学習にならないというわけだ。学校教育には向かない、誰が言い出したか知らない教育のデジタル化。本当に充実した教育とは何かを考える時代にさしかかっているのかもしれない。

About the Author

赤松 伊織
赤松 伊織
豊受真報編集長、赤松伊織です。読者の皆様に様々な情報をご提供できるよう精進してまいります。豊受真報をご愛読くださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。